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- 2008年度 ラグビー専門部 全国 活動紹介
- 第33回 高等学校指導者研修会-2
第33回 高等学校指導者研修会-2
- 講演 「2009ATQプロジェクト基本方針・エイジグレードによる強化プラン及び第34期高校日本代表U18フランス代表来日シリーズについて」
- 講演 「トップレフリーと高校指導者の立場から―監督として指導に必要なものは何かー」
- 講演 「安全なタックルの指導」
講演 「2009ATQプロジェクト基本方針・エイジグレードによる強化プラン及び第34期高校日本代表U18フランス代表来日シリーズについて」
日本協会競技力向上委員会 山本 寛
「ワールドカップ」・「ワールドカップセブンス」に次ぐ国際大会である「ジュニアワールドチャンピオンシップ」の第2回大会が今年6月に日本で開催される。是非日本中にこのことを発信していただきたい。どのような大会なのかを見ていただき、成功を収めて2015年、2019年のワールドカップ招致につなげていきたい。ちなみにこのジュニアワールドチャンピオンシップの第1回ウェールズ大会には16チームが参加、日本は15・16位決定戦でUSAに勝ち、15位だった。5位のオーストラリアはチームにスーパー14のメンバーが10名含まれており、そのようなチームと戦わなければならない。端的に言えば、プロ対アマ(学生)の戦いとなる。
ATQプロジェクトは2006年から検討され、2007年から始動した。現在世界の流れはU20を頂点にシフトしている。ATQの目指すラグビーのビジョンとして「SAMURI Spirit」を掲げ、その中でもAgility(敏捷性)・Speed・Skill・Intelligent(知的であること)を最重要視して世界と戦っていきたいと考えている。ワールドベストにおいてはディフェンスラインのスピード、ゲーム展開のスピード、ラックは低く・早く・激しく、キックでトライを取る、の4点をジャパンスタイルとしていく。ATQはU20を頂点に活動していくが、2015年・2019年のワールドカップではまさに現在の高校生世代が代表の中心になる。この世代をいかに強化していくかが命題となる。JAPANユース強化ストラクチャーでは47都道府県を9ブロックに分け、それを三地域へ持っていくシステムをとっている。U19以下の強化として9ブロックへのU20スタッフの巡回・指導、三地域選抜チームでの試合、ワイカト協会への派遣等を行う。
高校代表は「世界を知る」ことがターゲットであり、U19で世界と戦う前のファーストステップと考えている。防御ではディフェンスから陣地を取ること、個人タックルの向上を掲げ、個からユニット・集団へとつなげていく。攻撃ではダイヤモンドサポート・アタックから局地攻めをする時の数的優位を作ること、ボールを保持しない時のワークレートを高めることを行う。これらの目標は過去3年間オーストラリア遠征等を通して継続し、レベルアップを図ってきた。今年の高校代表は夏にフランスと2試合行ったが、2009年3月にもイングランド遠征を実施する。防御面の、「前に出る→タックル→からみ→立つ」というディフェンスサイクルの徹底を図っていきたいと考えている。対フランス戦でのBall Possession(ボール獲得率)を見ると、1試合目がジャパン48.1%に対しフランスが51.9%、2試合目がジャパン72.1%に対しフランス27.9%であったが、今回の課題としては3つの点があげられる。第一に1対1の局面の作り方に問題がある。1対1の原理・原則を知っている選手が少ないこと、タッチラインの使い方、味方の使い方等、これらはもっと下のエイジグレードで育てていかなければならない。また、ボールの再獲得を目指したタックルも必要である。第二に国際試合の経験値不足とボディサイズでアドバンテージを得る体格の必要性があげられる。190㎝で170㎝の選手並みの動きが必要であり、対フランス戦では少し劣勢ではあったがスクラムとモールは通用したという成果があった。第三にワイドレンジ(3チャンネル)を攻撃した時のボディコントロールの重要性である。更にはスクラムも世界を意識した組み方を教えていかなければならない。なお、フランスは一回の攻撃で独特のポジショニングによりオフロードパスを4~5回行い、パスを出されるところにサポートが湧いて出てくる。
強固なディフェンスをして数的優位な場面を多く作り、イングランド遠征に向けて努力していきたい。
・質疑応答より
Q)スクラムの組み方で、「ヒットして足を動かす」というのを詳しく説明してほしい。
A)世界レベルではヒットして止まるということはない。ヒット・アンド・チェイシングである。日本ではヒットした後止まるという動作があるが、海外では組んだらコンテストし合う(安全面での問題はあると思うが)。
Q)対海外のチームで日本が優位に立っているところと不利なところとは?
A)海外のチームには継続させようとする意識・行動(ポジショニング)がある。1対1の攻防で勝ってこそスペースが空く。常に相手を見ており、ボールありきのサポートをしてくる。日本が優位に立てるところは、ラックでのタイムマネージメントである。
Q)日本の高校生に練習してほしいことは?
A)1対1の攻防をグリッドで(どちらに追い込むと閉じこめられるのか)。ボールを奪うことを前提としたタックル(どういうポジショニングを取ったら相手を捕まえられるのか)。これらの点を理解していない選手が多い。
Q)高校代表のこれからのチーム作り・方向性は?
A)ディフェンスでの陣地取り、ELV導入に伴ってのキックを使ったエリアマネージメント、タイムマネージメント等。攻撃に関しては、局地(狭いスペース)を攻めていくチャンスはあると思っている。
Q)本日講演してくださったことをチームに持ち帰り広めていきたいが、これらの情報をどこから取り出すことができるのか?
A)代表事業部が管理する部門なのですぐにお答えできないが、早急に取り出せる方法を見出していきたい。
講演 「トップレフリーと高校指導者の立場から ―監督として指導に必要なものは何かー」
前日本協会レフリー委員長 阿世賀 敏幸
「ラグビーを通して学んできたことを、どうやって子ども達に伝えていくのか。」これが私たちにとって重要な問題だと思う。監督とは何だろう、ラグビーの精神とは何だろう、ということにつながっていくことなのではないかと考えている。
32歳の時、山中湖でのB級レフリー認定講習に参加したが、「走る」ことの大切さを改めて認識した。3年間で三地域レフリーからトップレフリーの候補となり、「トップを目指そう」という自覚が生まれた。当時勤務していた高校で、卒業する担任クラスの生徒に対して自分はトップレフリーになること、お互いに目標に向けて頑張ろうということを誓い合ったこともあった。1990年にA1、1994年にAに昇格、当時は現在のようなアセッサーもなく、いわば徒弟制度の中で先輩の技術を見て自分が直していくという時代であった。多くの経験の中には失敗がなかったわけではないが、その中でプレヤーの気持ちを汲むことの大切さを知った。レフリーは単に事実の判定だけではなく、プレヤーの身になって考えることが大切だと思った。
今一度、コーチの役割を考えてほしい。ラグビー競技の原則は争奪と継続、プレーの原則は前進・継続・支援・圧力である。プレーの原則を達成させるのが、コーチの役割である。「安全」についても当然考えなければならない。レフリーサイドからも同様である。レフリングの最大の原則は安全・公正・競技規則の適用であり、これらに基づいたレフリングを行うことが必要である。現在大学生にレフリングの指導をしているが、実際にこれらを適用することは決して容易ではない。大切なのは安全であること、ゲームの進行をスムーズに行うことである。ゲームでの笛を単に減らすのではなく、ゲームの早い段階で笛を吹いて整理することが重要であると考えている。レフリーは一日でトップレフリーにはなれない。レフリーに必要なものは経験(場数を踏むこと)である。特にプレッシャーのある場においての経験にはレフリーコーチの存在も必要であるが、当然経験を積む上で失敗もする。その時にチームサイドからの非難や暴言ほどレフリーを潰してしまうものはない。高校の大会やレフリー研修での高校生の試合においても、よく見られるのが現状である。
2年前にレフリー委員長を辞し、レフリーアカデミーを立ち上げた。その際にサッカー関係者と交流の機会があったが、サッカー関係者から「ラグビーは判定に不平を言わないこと」を賞賛された。しかし、ラグビーが決してそうではない方向に向かっていることに危惧を抱いている。サッカー関係者からは「プレヤーがレフリーに対して不平・不満をいうことが子ども達の夢を奪う。」という話もあった。ラグビーの試合で、レフリーへの不平・不満の声を聞くと胸が痛む。ジュニアの試合で保護者達からもレフリーに対する不平・不満が出ることもある。監督が不平・不満を言えば、選手や周囲の者も当然同じようになってしまう。「ラグビー精神を継承していくこと」こそが、コーチも含め最も大切なことではないか。レフリーは判定を変えることはできない、それがラグビーである。プレヤーはレフリーの決定に反論してはならない、これがラグビーの精神である。パーフェクトなレフリーはいないが、レフリーに試合を「委ねる」ことが根本ではないか。
コーチサイドとレフリーサイドが共に協力していってこそ、ラグビー精神は発展していく。いがみあうようであっては発展することはない。判定には必ずグレーゾーンが生じる。事前に十分なディスカッションを行うことが、レフリーとコーチの役目である。マイクロソフトカップでは、前日にレフリーとコーチがディスカッションを実施している。トップレフリーは日々精進している。レフリーとコーチは、車の両輪としてやっていくべきであるということを痛切に感じている。
講演 「安全なタックルの指導」
日本協会競技力向上委員会 渡辺 一郎
日本協会競技力向上委員会 山田 睦雄
(1)日本協会競技力向上委員会 渡辺一郎
ラグビーの指導で一番重要なのは安全であるということである。現状ではタックルにおける事故が多く報告されている。安全推進対策本部では各県の安全対策委員長、医務委員長ならびにコーチトレーナーを招集して安全なタックルの伝達講習会を開催し、各地域・都道府県で同一内容の講習会を開き、今年度もすべての加盟チームの指導者やレフリーに講習を受けてもらうことにしている。各チームはこの講習を受講しないと大会に参加できないのであるが、受講するだけでなく講習会で使用するDVDを見て、安全対策を実践してほしい。
【 DVDより 】
現状ではタックルにおける怪我が多く報告されている。タックルは大きな危険が伴っていることを忘れてはいけない。タックルでの怪我の原因としては、逆ヘッドタックルや衝突するタックルが挙げられる。指導者は「正しいタックル=安全なタックル」という認識を持つべきである。
タックルには、アプローチ・コンタクト・ボールコンテストという三つの局面がある。
- アプローチ:アタックの正面に立たない。右肩と右肩、左肩と左肩という位置に対面する。
- コンタクト:目を開き、顎を上げて周辺視を確保する。脇を締めてハンズアップし、コアを固めた姿勢=ストロングポジションをとる。逆ヘッドにならない。
- ボールコンテスト:タックル成立後素早く立ち上がり、ボールを争奪する。
練習方法は段階的な練習を行う。最初はストロングポジションをとり、視線を相手のへそに置いて足を踏み込む。頭が下がらないように、下から上に押し込む。バインドは脇を締めて、頭で相手を押しつけて逃がさないようにする。応用段階では相手が内側に切れ込んで、ターゲットショルダーが変わった瞬間には足を踏み出して肩を合わせて逆ヘッドにならないようにする動きも練習する。逆ヘッドが一番危険である。
指導者も選手もタックルは相手を止めることしか頭にないのではなく、安全を第一に考えてもらいたい。パス練習の回数と同じだけタックルの練習をすれば、怪我は防ぐこ とができるはずである。自分の人体を守るためには自分が練習するしかない。
(2)日本協会競技力向上委員会 山田睦雄
1989年~2008年の日本の頸髄損傷の報告例を見ると、以前はスクラムにおける事故が多かったが、タックルによる損傷の例が増えている。これは技術不足が原因と思われる。この20年間で脊髄・脊椎の損傷事故報告は183例あり、そのうち後遺症が残った例は53例ある。事故の発生の場面としては、試合で発生した例が約50%、原因となったプレーはスクラムが34%、タックルが37%、モールが13%、ラックが10%である。発生月では8月と10月に多い。
2006年度の重傷事故発生件数は17件(内、脊髄損傷は10件)、2007年度の重傷事故発生件数は25件(内、脊髄損傷は13件)であった。頭部損傷は2006年度は5件、2007年度は9件あった。脊髄を損傷すれば四肢に麻痺が起こったり、回復しても後遺症に悩まされることになる。頭部の損傷では高次の機能障害(失語症や記憶障害等)が残り、麻痺がなくてもその後の生活がうまくいかないことも生ずる。頸髄損傷の選手の平均年齢は80歳の選手の例を除くと22.8歳、頭部外傷の選手の平均年齢は17.8歳である。
2008年は事故発生例が15件報告されている。海外ではほとんど例は報告されていない。受傷後に回復したケースも含めて、15件のうち9件が頸髄損傷、3件が頭部 の損傷である。受傷した選手の平均年齢は21.2歳である。
- ○ 頸髄損傷(9件:21.9歳)発生状況=1on1・ダブルタックル・タックルされて・スクラム・モール・ラインアウト
- ○ 急性硬膜下血腫(3件:22.7歳)発生状況=タックルして・ラック
- ○ 内臓損傷(2件:18歳)発生状況=タックルされて
※各講演及び研究発表後は、積極的な質疑応答がなされました。また、各都道府県より運営上の現状等についての報告もなされました。なお、第14回(平成2年)より第27回(平成15年)までの指導者研修会の記録を収めた「高等学校ラグビーフットボール指導者研修会紀要(第二巻)」を一部500円にてお取り扱いしております。高等学校での指導におけるヒントも多く載せられております。
※ご希望の方は、運営委員の川中子 修(東京都立富士高等学校内:〒164-0013 東京都中野区弥生町5-21-1 TEL:03-3382-0601 FAX:03-3382-8224)までご連絡ください。















